「AI が作ったサイトっぽい」を機械で採点したら、直すなと言うべき指摘があった — 中小企業 × AI 経営(2026年7月)
AIで作ったサイトは、どこか無難でAIっぽく見えると言われがちです。160ページを超える自社のWebツール集を機械に採点させ、指摘のうち何を直し、何をあえて直さなかったか。チェックツールを「上司」ではなく「物差し」として使う話です。
毎日同じものを見ていると、良いところも悪いところも、だんだん見えなくなってきます。自分の店構え、自分の資料、自分の話し方。「これでいいはずだ」という感覚だけが残って、本当にいいのかどうかを確かめなくなっていく。
私たちにも、これによく似た不安がありました。ただし対象は、店構えではなく、自分たちで作っているWebサイトでした。作っているのが自分とAIだけなので、なおさら目が慣れてしまいます。誰か外の目で、一度きちんと見てもらいたいとずっと思っていました。
160ページ超のサイトを、機械に採点させてみた
私たちはtotonoeという無料のWebツール集を運営しています。単位換算や日数計算など、日々の事務でつまずく小さなことを、ブラウザの中だけで片づけるためのサイトです。現在160種類を超えるツールを公開しており、作っているのは私とAIです。
だからこそ、ずっと引っかかっていたことがありました。「これ、AIが作ったサイトっぽく見えていないだろうか」。AIを使って作ったものには、独特の「っぽさ」が出ると言われます。どこか無難で、どこか既視感があって、手触りがない。毎日見ているので目が慣れてしまい、「なんとなく大丈夫な気がする」以上の判断ができません。社員数名の会社ですから、デザイナーに客観評価を依頼するのも簡単ではありません。かといって、感覚のまま160ページ以上を放置するのも気持ちが悪い。
そこで、この不安を機械に採点させてみました。「AIっぽさ」を検出する物差しを使い、トップページと新しく作ったツールを実際に採点させたところ、結果はこうでした。
| 深刻度 | 件数 |
|---|---|
| 致命的 | 0件 |
| 重大 | 1件 |
| 軽微 | 2件 |
致命的ゼロには、正直ほっとしました。ただ3件は出ています。ここからが本題でした。
指摘を全部飲むと、個性が消える
指摘を読んで気づいたことがあります。「AIっぽさ」には、性質の違う2種類が混ざっていました。手を抜いた結果、細部が雑になっている規律の緩みと、自分で選んだ表現がたまたま「AIっぽい」と分類されがちな単なる作風です。この2つを区別できていなかったのが、そもそもの悩みの原因でした。
これは、機械の採点に限った話ではありません。中小企業の経営でも、外部の指摘をすべて受け入れると、たいてい同じことが起きます。
| よくある場面 | 指摘を全部受け入れると起きること |
|---|---|
| 内装を専門家に見てもらう | 「今どき」にはなるが、どの店も同じ顔になる |
| 文章をチェックツールに通す | 正しくはなるが、書き手の癖が消える |
| 接客をマニュアル通りに直す | ミスは減るが、常連が好きだった愛想も消える |
チェックツールの指摘を100%受け入れると、どのサイトも同じ顔になります。 チェックツールは「一般的に良いとされる形」を知っていますが、その会社が何を大事にしているかは知りません。指摘は測定値であって、どう扱うかは経営判断です。体重計は数字を出しますが、痩せるべきかどうかは自分で決めます。それと同じことだと思っています。
以前は「AIっぽいかも」という漠然とした不安があり、指摘されると全部直したくなっていました。今は違います。触り心地や性能に関わる部分は直す。自分の好みは関係ありません。一方、表現やトーンに関わる部分は自分で決める。監査の言いなりにはなりません。この線が引けると、判断が速くなります。
直したのは、見た目が変わらない3点
結局、直すべきは「規律」だけだと判断しました。画面の見た目はまったく変わっていません。地味です。
- 動きの指定がざっくりしていた(61箇所)。触れたときの色の変化などに「全部の要素をなめらかに変化させる」という大雑把な指定を使っていました。必要な部分だけを指定する形に直しましたが、進捗バーなど動きそのものが意味を持つ8箇所は、あえてそのまま残しました
- キーボード操作時の「今ここ」表示が揃っていなかった。マウスを使わない人には、選んでいる場所が枠で分かる必要があります。マウス利用者には一切見えない部分で、見えないから雑になっていました
- 数字の桁が揃っていなかった。計算結果の数字が変わるたびに、表示が微妙にガタつく問題を、等幅の表示に直しました
どれも「言われなければ気づかないが、言われると気になる」類のものです。
直さなかったのは、自分たちの声
監査は、見出しの上に小さく英字のラベルを置く書き方や、絵文字を使った柔らかいトーンも「AIっぽい」として指摘してきました。たしかにAIが量産したページによくある特徴かもしれません。でも、これは私が選んだ表現です。
totonoeは「事務作業でつまずいた人が、急いで来て、すぐ帰る」サイトです。だから硬くしたくなかった。絵文字も英字ラベルも、160ページ以上で一貫して使い続けてきた、このサイトの「声」です。指摘されたから直す、をやってしまうと、サイトから個性が消えます。
そこで、この2点は意図的に維持すると決め、監査結果に「直さない理由」を書き添えて記録に残しました。次に誰か、未来の自分を含めて、同じ指摘を受けたときにまた悩まなくて済むようにするためです。
直した内容は形として残りますが、直さなかった判断は放っておくと消えます。 半年後に同じ指摘を受けて、また同じ議論をすることになる。「これは検討済みで、こういう理由で維持している」と書いておけば、判断は資産になります。
見えない部分ほど、雑になっている
作業自体は地味です。見た目は変わっていないので、お客様から見れば「何も起きていない」に等しい。それでも得られたのは、自社の表現について「これは規律の緩みか、自分の声か」を切り分ける基準でした。これは思っていたより大きな収穫でした。
3つの修正のうち2つは、普通に使っている人には見えない部分でした。キーボード操作時の表示と、内部的な処理の指定です。見えないから、後回しにしていた。 これは中小企業の運営全般に言えることかもしれません。お客様から見えない部分こそ、意識的に点検の仕組みを持たないと、静かに劣化していきます。
「AIで作ったからダメ」でも「AIで作ったから効率的」でもなく、AIで作ったものをどう点検して、どこを自分の判断として守るか。実際に手を動かしてみると、そこが勝負どころだと感じます。今回は幸い、致命的な問題はありませんでした。ただ、それを「たぶん大丈夫」ではなく実測で確認できたことに意味があったと思っています。
自社サイトをAIと一緒に作っている方がいれば、一度「機械に採点させてみる」のはお勧めです。全部を直す必要はありません。どこを直さないかを決めるために測る、くらいの気持ちがちょうどよいと思います。
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