「AI が作ったサイトっぽい」を機械で採点したら、直すなと言うべき指摘があった — 中小企業 × AI 経営(2026年7月)
AIで作ったサイトは"AI臭い"と言われがちです。自社のWebツール集163ページを脱AI-slop監査にかけ、指摘のうち何を直し、何をあえて直さなかったか。監査ツールを「上司」ではなく「物差し」として使う話です。
はじめに:この記事の前提
Koinobori 代表取締役の杉﨑です。 社員数名の会社を経営しながら、自社の Web サービスを自分の手で作り、AI を相棒に毎日更新しています。
自社で totonoe という無料の Web ツール集を運営しています。単位換算や日数計算など、日々の事務でつまずく小さなことを、ブラウザの中だけで片づけるためのサイトです。現在 160 種類を超えるツールを公開しています。
作っているのは私と AI です。だからこそ、ずっと引っかかっていたことがありました。「これ、AI が作ったサイトっぽく見えていないだろうか」
今回は、その不安を機械に採点させてみた話です。結果として、直すべき指摘と、あえて直さないと決めた指摘の両方が出てきました。
1. 課題:「AI っぽい」とは何なのか
感覚では判断できない
AI を使って作ったものには、独特の「っぽさ」が出ると言われます。どこか無難で、どこか既視感があって、手触りがない。英語圏では AI slop(AI の粗製品)という言い方もされます。
問題は、作った本人には分からないことです。毎日見ているので目が慣れます。「なんとなく大丈夫な気がする」以上の判断ができない。
社員数名の会社ですから、デザイナーに客観評価を依頼するのも簡単ではありません。かといって、感覚のまま 160 ページを放置するのも気持ちが悪い。
「っぽさ」の正体は2種類ある(と、あとで分かった)
先に結論を書くと、この「AI っぽさ」には性質の違う 2 種類が混ざっていました。
- 規律の緩み — 手を抜いた結果、細部が雑になっている部分
- 単なる作風 — 自分で選んだ表現なのに、たまたま「AI っぽい」と分類されがちな部分
この 2 つを区別できていなかったのが、そもそもの悩みの原因でした。
2. 取り組み:機械に採点させ、指摘を仕分ける
2-1. 監査を実測でかけた
「AI っぽさ」を検出するための監査の物差しを導入し、サイトのトップページと新しく作ったツールを実際に採点させました。
結果はこうでした。
| 深刻度 | 件数 |
|---|---|
| 致命的(critical) | 0 件 |
| 重大(major) | 1 件 |
| 軽微(minor) | 2 件 |
正直、ほっとしました。致命的ゼロ。日々「手作りでやっている」と言ってきたことが、少なくとも数字の上では裏付けられた形です。
とはいえ 3 件は出ています。ここからが本題でした。
2-2. 直したもの:見た目が変わらない「規律」の3点
指摘を読んで、直すべきは「規律」だけだと判断しました。結果的に、画面の見た目はまったく変わっていません。 地味です。
① 動きの指定を、ざっくりかけていた(61 箇所)
ボタンに触れたときの色の変化など、画面のちょっとした動きに「全部の要素をなめらかに変化させる」という大雑把な指定を使っていました。楽なので多用していたのですが、これは必要のない部分まで計算させることになり、動作を重くします。
61 箇所を、必要な部分だけを指定する形に直しました。ただし、進捗バーなど「動きそのものが意味を持つ」8 箇所は、あえてそのまま残しました。 一律で機械的に置き換えると、動いてほしいものが動かなくなるからです。
② キーボードで操作したときの「今ここ」表示
マウスを使わず、キーボードだけでサイトを操作する人がいます。そのとき「今どの項目を選んでいるか」が枠で分かる必要があります。ここが統一されていませんでした。
マウス利用者には一切見えない部分です。見えないから雑になっていた、とも言えます。基準を決めて揃えました。
③ 数字の桁を揃える
計算ツールなので、数字が刻々と変わります。ところが桁ごとに文字幅が違うため、数字が変わるたびに表示が微妙にガタつく。等幅で表示する設定に変えました。
これも「言われなければ気づかないが、言われると気になる」類のものです。
2-3. 直さなかったもの:これは「AI 臭」ではなく自分の声
ここが今回、一番考えたところです。
監査は、いくつかの表現を「AI っぽい」として指摘してきました。具体的には、見出しの上に小さく英字のラベルを置く書き方や、絵文字を使った柔らかいトーンです。
たしかに、AI が量産したページによくある特徴かもしれません。でも、これは私が選んだ表現です。
totonoe は「事務作業でつまずいた人が、急いで来て、すぐ帰る」サイトです。だから硬くしたくなかった。絵文字も英字ラベルも、**160 ページ以上で一貫して使い続けてきた、このサイトの「声」**です。
指摘されたから直す、をやってしまうと、サイトから個性が消えます。
そこで、この 2 点は意図的に維持すると決めました。監査結果に「直さない理由」を書き添えて記録に残しています。次に誰か(未来の私を含む)が同じ指摘を受けたとき、また悩まなくて済むように。
3. 結果:スコアではなく、判断基準が手に入った
作業自体は地味です。見た目は変わっていないので、お客様から見れば「何も起きていない」に等しい。
得られたのは、自社の表現について「これは規律の緩みか、自分の声か」を切り分ける基準でした。
これは思っていたより大きな収穫でした。以前は「AI っぽいかも」という漠然とした不安があり、指摘されると全部直したくなっていました。今は違います。
- 触り心地や性能に関わる部分 → 直す(自分の好みは関係ない)
- 表現・トーンに関わる部分 → 自分で決める(監査の言いなりにならない)
この線が引けると、判断が速くなります。
4. 学び:監査ツールは「上司」ではなく「物差し」
全部飲むと、無難になる
今回いちばんの学びはこれです。
チェックツールの指摘を 100% 受け入れると、どのサイトも同じ顔になります。 チェックツールは「一般的に良いとされる形」を知っていますが、その会社が何を大事にしているかは知りません。
指摘は「測定値」です。測定値をどう扱うかは経営判断です。体重計は数字を出しますが、痩せるべきかどうかは自分で決めます。それと同じことだと思っています。
「直さない」も記録に残す
もう一つ大事だったのは、直さないと決めたことを、理由つきで記録に残したことです。
直した内容は形として残りますが、直さなかった判断は放っておくと消えます。 半年後に同じ指摘を受けて、また同じ議論をすることになる。「これは検討済みで、こういう理由で維持している」と書いておけば、判断は資産になります。
見えない部分ほど、雑になっている
3 つの修正のうち 2 つは、普通に使っている人には見えない部分でした。キーボード操作時の表示と、内部的な処理の指定です。
見えないから、後回しにしていた。これは中小企業の運営全般に言えることかもしれません。お客様から見えない部分こそ、意識的に点検の仕組みを持たないと、静かに劣化していきます。
おわりに
「AI で作ったからダメ」でも「AI で作ったから効率的」でもなく、AI で作ったものを、どう点検して、どこを自分の判断として守るか。実際に手を動かしてみると、そこが勝負どころだと感じます。
今回は幸い、致命的な問題はありませんでした。ただ、それを「たぶん大丈夫」ではなく実測で確認できたことに意味があったと思っています。
自社サイトを AI と一緒に作っている方がいれば、一度「機械に採点させてみる」のはお勧めです。全部を直す必要はありません。どこを直さないかを決めるために測る、くらいの気持ちがちょうどよいと思います。
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