アクセス解析を2か月ぶりに直視したら、思い込みが4つ壊れた — 中小企業 × AI 経営(2026年7月)
自社サイトのGA4を全期間で読み込んだら、社名検索が88%・AI経由の訪問者が最も熱心・採用ページが実質No.2という実態が出てきました。「実装済みなのに数字が出ない」計測の落とし穴を含む、中小企業のアクセス解析の実録です。
はじめに:この記事の前提
Koinobori 代表取締役の杉﨑です。 社員数名の会社を経営しながら、このコーポレートサイトも自分の手で作り、AI を相棒に毎日更新しています。
このサイトにアクセス解析(Google アナリティクス)を入れたのは 2 か月ほど前です。入れたことに満足して、まともに読んでいませんでした。
今回、約 70 日分のデータを腰を据えて読みました。結果、自分が思っていたことが 4 つ壊れました。 そして、そのうち 1 つは「そもそも測れていなかった」という、笑えない話でした。
数字を出しながら書きます。社員数名の会社のリアルな規模感として、参考になれば幸いです。
1. 前提:この 70 日の全体像
まず全体の数字です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| セッション数 | 1,735 |
| アクティブユーザー | 1,103 |
| ページ表示回数 | 3,913 |
| エンゲージメント率 | 58.2% |
| 平均セッション時間 | 43 秒 |
大企業から見れば小さな数字です。ただ、社員数名の BtoB 企業のコーポレートサイトとしては、こんなものだと思います。大事なのは規模ではなく、この中身に何が写っているかでした。
2. 壊れた思い込み 4 つ
2-1. 「社名を知っている人」しか来ていない
検索から来た人を調べて、まずここで固まりました。
検索クリックの約 88% が社名(指名)検索でした。つまり「Koinobori という会社を既に知っている人」が、社名で調べて辿り着いている。
社名検索での順位は 1 位、クリック率は 56.1%。指名検索の受け皿としては完成しています。 ここは素直に嬉しい。
問題は裏側です。社名を知らない人が入ってくる入口が、ほぼ無い。 サイト全体の平均掲載順位は 15.8 位。検索結果の 2 ページ目です。2 ページ目はほとんど見られません。
つまりこのサイトは、新規のお客様を連れてくる装置としては、まだ機能していないということでした。
おまけ:社名が「鯉のぼり」と戦っている
さらに笑ってしまった発見があります。
「koinobori」という単語だけで検索された回数は 196 回ありました。しかしクリック率は 6.12%。社名フル検索の 56.1% と比べて桁違いに低い。
理由は明白で、端午の節句の「鯉のぼり」(実物)を探している人が大量に混ざっているからです。当社を探している人ではないので、当然クリックされません。
これは対策のしようがない、社名に由来する構造的なハンデです。分かっただけでも収穫でした。今後は「koinobori 単体」で評価せず、社名フル検索や事業名での検索を指標にすべきだと整理できました。
2-2. AI 経由の訪問者が、いちばん熱心だった
これがいちばん面白い発見でした。流入経路ごとの「熱量」を比べた表です。
| 経路 | セッション | エンゲージ率 | 平均滞在 |
|---|---|---|---|
| 検索 | 915(52.7%) | 70.5% | 59 秒 |
| 直接アクセス | 565(32.6%) | 39.3% | 17 秒 |
| 他サイトから | 202(11.6%) | 58.9% | 48 秒 |
| AI アシスタント経由 | 18(1.0%) | 61.1% | 1 分 19 秒 |
ChatGPT などの AI 経由でやってくる人は、**全体のわずか 1%(18 セッション)**です。数としては誤差のようなもの。
ところが滞在時間は全経路で最長の 1 分 19 秒。検索経由(59 秒)より 30 秒以上長い。
考えてみれば当然かもしれません。AI に相談して「こういう会社があります」と提示されて来る人は、既に課題を言語化できているわけです。冷やかしで来ない。
まだ 18 件なので断定はできません。ただ、AI に見つけてもらえる書き方をする意味はありそうだと、数字で少し確信が持てました。
2-3. 採用ページが、実質 No.2 コンテンツだった
ページ別の数字も予想外でした。
| ページ | 表示回数 | 平均滞在 |
|---|---|---|
| トップ | 1,381 | 36 秒 |
| 採用情報 | 545 | 1 分 30 秒 |
| 会社案内 | 408 | 1 分 08 秒 |
| お問い合わせ | 380 | 24 秒 |
採用ページが、トップに次ぐ表示回数で、しかも滞在時間が 1 分 30 秒。サイト内でトップクラスに読み込まれています。
私はこのサイトを「営業のためのもの」だと思って作っていました。実際には、働き先として当社を検討している人が、かなり真剣に読んでいる。
そしてもう一つ気づきました。トップページ 36 秒に対して、深いページは 1 分以上。 つまりトップは流し読みされ、奥のページで熟読される構造です。トップに情報を詰め込むより、奥のページへ確実に送り込むほうが効くということになります。
2-4. 海外からのアクセスの多くは、人間ではなかった
海外からの流入もそれなりにありました。ただ中身を見ると、米国から 109 人・エンゲージメント率 2.75%・滞在 0 秒。都市名を見ると “Boardman”。ここはクラウドのデータセンターがある土地です。
要するに自動巡回のプログラムです。人ではありません。
日本国内は滞在 1 分 25 秒と健全なので、海外分をそのまま混ぜて平均を見ると、実態を見誤ることになります。
3. 直した 4 つ
3-1. 最大の教訓:「動いているのに、数字が出ない」
いちばん恥ずかしい発見です。
問い合わせの完了数、つまりこのサイトで最も大事な数字が、ずっと 0 件でした。
「計測の仕組みを作らないといけないな」と思ってコードを調べたところ、問い合わせ送信を記録するコードは既に書いてありました。 しかも自分で書いたコメントに、こう残っていました。
※ 管理画面側で「重要な成果」として設定すれば、実数が計測されます
つまりコードは完成していて、管理画面のスイッチを入れていなかっただけ。データ自体は裏で収集されていました。設定を有効にして、それで終わりでした。
ここから得た教訓は、経営としてけっこう大きいものでした。
プログラム側の実装と、サービス管理画面側の設定は、別の作業である。
片方だけ済ませて放置すると、「動いているのに数字が出ない」状態が延々と続きます。 しかも誰も困らないので気づかない。私は 2 か月気づきませんでした。
外部サービスを導入するときは、「作った」と「設定した」を必ずセットで確認する。これを社内ルールにしました。
なお、この手の設定は遡って集計されないのが普通です。私が失った 2 か月分のデータは、二度と手に入りません。
3-2. 内容ではなく「見出し」を直した
検索の数字を見ていて、不思議な差を見つけました。
- 「ローカル LLM 費用」→ 12.0 位
- 「ローカル LLM 料金」→ 21.2 位
ほぼ同じ意味なのに、10 位近い差があります。
ページを見直して原因が分かりました。本文とよくある質問には、費用の説明が十分に書いてありました。しかし見出しが「費用の考え方。」となっていて、サービス名が入っていなかった。 そして「料金」という語は、ページ内にほぼ存在しませんでした。
そこでやったのは、文章を足すことではなく、見出しを直すことでした。見出しにサービス名を入れ、価格帯の情報を機械にも読める形で明示しました。
中身は十分なのに、見出しが弱いせいで拾われない。 これは他のページでも起きていそうです。
3-3. トップに採用の入口を作った
採用ページがよく読まれていると分かったのに、トップページの本文には採用への入口がありませんでした。 ヘッダーとフッターのリンクだけ。
トップは 36 秒の流し読みです。メニューの隅にあるリンクでは届きません。そこで本文中に採用への案内を新設しました。
その際、実績の数字はあえて載せませんでした。 数字は年度の進行状況によって見せ方を変える必要があり(この話は別のコラムに書きました)、専用の仕組みを通して出すルールにしています。入口は入口に徹し、数字は採用ページ本体に任せるという整理です。
3-4. 自分のアクセスを数えないようにした
最後は地味ですが重要です。自社のオフィスからのアクセスを、集計から除外しました。
毎日サイトを触っている本人のアクセスが混ざったままでは、数字が甘くなります。今まで見ていた数字には、私自身の閲覧が混ざっていたわけです。
なお、先ほどの海外の自動巡回については、アナリティクス側の機能では除外できません(除外できるのは自社と開発者のアクセスだけ、という仕様です)。こちらは「日本国内だけを表示する」条件を保存しておき、読むときに絞る運用にしました。
4. 学び
数字は「入れた瞬間」ではなく「読んだ瞬間」に価値が出る
当たり前のことですが、身に沁みました。解析ツールを導入した時点では、何も分かっていなかった。70 日分を通しで読んで、初めて 4 つの思い込みが壊れました。
しかも読むのにかかった時間は数時間です。費用対効果は明らかに高い。「入れたけど読んでいない」状態が一番もったいない。
思い込みは、だいたい自分に都合よくできている
私は「営業目的のサイト」だと思っていました。実際には採用でよく読まれていた。 「AI 経由なんて誤差だろう」と思っていました。実際にはいちばん熱心な読者でした。
自分が作ったものについては、作った意図で見てしまう。 数字は、その色眼鏡を外してくれます。
測れていないものは、存在しないのと同じ
問い合わせ数を 2 か月測れていなかったのは痛恨でした。「どの経路から来た人が問い合わせにつながるか」が分からないままだったわけです。
これから 1 〜 2 か月かけて、ようやくそれが見えるようになります。特に、AI 経由の人が本当に問い合わせまで至るのかは、いま個人的に一番知りたい数字です。
おわりに
派手な施策は何もしていません。設定を 1 つ有効にして、見出しを直して、リンクを 1 本足して、自分のアクセスを除いただけです。
それでも、サイトに対する解像度は明らかに上がりました。 これまでは「なんとなく良くなっている気がする」でしたが、今は「社名を知らない人の入口が足りない」「採用の受け皿としての価値がある」と具体的に言えます。
アクセス解析を入れたまま読んでいない方は、一度だけ腰を据えて全期間を眺めてみることをお勧めします。思い込みが 1 つでも壊れれば、それだけで元が取れます。
数か月後、今回入れた計測がどんな数字を返してくるか。またこの場で報告したいと思います。
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