株式会社Koinobori
HANDS-ON / 執筆:杉﨑(代表取締役)

ブログ記事たった1本が、自社ツール173種の合計アクセスに勝った日 — 中小企業 × AI 経営(2026年8月)

無料ツール集のアクセス解析で判明した意外な事実——1本のブログ記事が173種のツール合計を上回り、検索流入はBingとGoogleがほぼ互角でした。そこから下した2つの経営判断を報告します。

はじめに:この記事の前提

Koinobori 代表取締役の杉﨑です。 社員数名の会社を経営しながら、自社の Web サービスを自分の手で作り、AI を相棒に毎日更新しています。

自社で運営している無料の Web ツール集があります。単位換算や日数計算など、日々の事務でつまずく小さなことを、ブラウザの中だけで片づけるためのサイトです。これまでコツコツとツールの本数を増やしてきました。ある日、アクセス解析を腰を据えて読んだところ、丹精込めて増やしてきたツールの本数と、実際に読まれている量が、まったく一致していないことが分かりました。今回はその話と、そこから同じ日のうちに下した2つの経営判断についてです。

1. 課題:「たくさん作った」のに、読まれ方を見ていなかった

このサイトは、当時173種類のツールを公開していました。1つひとつ手をかけて作ってきたものです。ただ正直に言うと、「どれがどれだけ読まれているか」をきちんと見たことがありませんでした。作ることに気を取られて、読まれ方を見ることを後回しにしていたのです。

もう一つ、経営として気になっていたことがあります。これだけの本数を無料で提供し続けて、このサイト単体で収益化すべきか。 広告を載せる案も社内で検討の俎上に上がっていました。

2. 取り組み:数字を見て、その日のうちに2つ決めた

2-1. アクセス解析を28日分読んだ

実際の数字はこうでした。

指標数値
期間28日間
アクティブユーザー492
ページ表示回数905

ここまでは想定の範囲内でした。驚いたのはこの先です。

ブログ記事、たった1本(銀行振込の名義をカタカナの全角で書く方法を説明した記事)のアクセスが、173種類あるツールページの合計アクセスを上回っていたのです。丹精込めて増やしてきたツール群より、片手間で書いた記事1本のほうが読まれていました。

検索エンジンの内訳を見ると、もう一つ意外な事実がありました。Bing 経由が155、Google 経由が141と、ほぼ互角だったのです。普段の感覚だと Google が圧倒的に多いはずですが、逆でした。考えられる理由は、このサイトがまだ新しいドメインで、Google がまだ評価を様子見している段階ということです。裏を返せば、Google 側にまだ伸びしろが残っているということでもあります。

2-2. なぜ記事の方が勝つのか、理由も数字で出た

同じ日の夜、検索での表示回数とクリック率も調べました。全体では表示回数10,008に対しクリック73、クリック率0.73%。検索の1ページ目に出ている単語でも、ほとんどクリックされていませんでした。

原因を掘ると分かりました。単位換算のような「調べればすぐ答えが出る」クエリは、検索エンジン自身が画面上に答えを表示してしまうため、わざわざこちらのサイトをクリックする必要がないのです。1ページ目に出ていても、素通りされます。

一方、検索エンジンが即答できない領域は違いました。たとえば、ある藩の石高を尋ねる検索のクリック率は2.02%、「石高◯万石は今でいうとどのくらいか」を尋ねる検索は6.25%。日本の暦や歴史、文化的な文脈が絡む話題は、検索エンジンが一言で答えを出しにくいので、ちゃんとクリックしてサイトまで来てくれるのです。これが、ブログ記事1本がツール全体に勝った理由でした。

2-3. 決断1:このサイトでは直接稼がないと決めた

広告収益を試算してみると、正直なところ片手間の飲み物代にもならない水準でした。それだけで却下する理由としては十分ですが、理由はもう一つありました。このサイトは「広告を一切載せない」ことを打ち出してきたブランドです。ここで広告を載せれば、自分たちの看板を自分たちで壊すことになります。

そこで直近12か月は、このサイト単体での収益化はしないと決めました。代わりに、「中小企業がAI経営を自社で実証している」という証明そのものを、本業(研修・顧問業)への信頼を得るためのエンジンと割り切ることにしました。本業の契約が1件成立する規模は、皮算用した広告収入とは桁が3つ以上違います。小さな広告収入のために本業の信頼を削るのは、経営判断として明らかに割に合いませんでした。

2-4. 決断2:勝ち筋が見えたので、同じ日のうちに増産した

「検索エンジンが即答できない、日本の暦・文化・文脈もの」が勝ち筋だと数字で分かった以上、悩んでいる時間がもったいないと判断し、同じ日の夜のうちに同系統の企画を4本、一気に増産しました。

企画規模特徴
厄年・七五三生年別97ページ生年から自動計算
日本100名城城別100ページ天守の高さは現存する12城だけ掲載し、不確かな数字は載せない方針を徹底
家紋30種図形の部品を組み合わせ、ページ生成時に自動で図を作る仕組み
鯉のぼり1ページ自社の名前にも関わる企画。時期に「これが正解」という決まりはない、と正直に書いた

このうち日本100名城は、事実の正確さを最優先にしました。築城年が分からない城は「不明」のまま空欄にし、諸説ある城には諸説フラグを付けて、断定を避けています。 「網羅性より正確性」という方針を最初に決めごととして明文化しておいたところ、担当した AI が自主的にこの基準を守って納品してきたのは、地味ですが安心材料でした。

この日1日で、ツールの本数は173種から191種・3,035ページまで増えました。

3. 結果と学び:「作った量」と「読まれる量」は別物

今回いちばんの学びは、これに尽きます。

「たくさん作った」ことと「読まれている」ことは、まったく別の指標です。 173種類のツールを地道に増やしてきたことは、無駄ではありませんでした。ただ、それだけでは「何が読者に刺さっているか」は分かりません。数字を見て初めて、勝ち筋が見えました。

そしてもう一つ。データが勝ち筋を教えてくれたら、悩む前にその日のうちに張る。 普段の自分なら、企画を練って、検討して、翌週に着手していたと思います。今回は数字という根拠があったので、迷わずその日のうちに動けました。根拠があるときの決断は、速くていい。

おわりに

無料のツール集を運営していると、「本数を増やすこと」自体が目的化しがちです。今回の一件で、本数ではなく「何が読まれているか」を見る癖がつきました。173種類のツールより、1本の記事のほうが勝つこともある。数字はそれを、感覚より先に教えてくれます。

自社のコンテンツ資産を「量」でしか見ていない方がいれば、一度アクセス解析を28日分だけでも読んでみることをお勧めします。悩んでいる勝ち筋が、もう数字の中に出ているかもしれません。


読者への問い: 自社のコンテンツを「作った量」で評価していませんか?「読まれている量」を、最後にいつ確認しましたか?

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執筆:Koinobori 株式会社 代表取締役 杉﨑

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