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AIに「取扱説明書」を作らせたら、私の思い込みを2つ、AI自身が正してきました

同じAIなのに、日によって仕事の質がばらつきました。弊社では、AIに新しい道具を一つも増やさないまま、渡す「環境」だけを整えました。結果、数え間違いや同じ失敗が止まり、AI自身が私の思い違いを2つ見つけて直してきました。

この記事のポイント

  1. AIが数え間違いを3回、確認手順の書き直しを4回繰り返した
  2. 原因はAIの能力でなく、失敗や注意点を知らせていなかったこと
  3. 成果物が物足りないとき、AIに何を渡しているかを見直す

Q. AIが同じ失敗を何度も繰り返すのはなぜ?

A. 失敗や注意点をAIに知らせておらず、指示のたびに忘れられてしまうからです。弊社では取扱説明書を作業場所に置き、踏んだ罠を検査の仕組みに書き込むなど、5つの地味な整備をしました。新しいツールは増やさず、AIに渡す情報を変えただけです。

新しく採用した人に、道具だけ渡して「あとはよろしく」と言ったことはありませんか。

腕のいい人ほど、それでも何とかしてくれます。ただし、同じ場所で同じように迷い、前任者と同じ失敗を、また一からやり直すことになりがちです。渡すべきは道具ではなく、迷わないための情報だったりします。

弊社ではこの数か月、同じ問題にAIで直面しました。優秀なはずのAIが、同じような失敗を何度も繰り返していたのです。

賢いはずのAIが、同じ失敗を繰り返した

数日のセッションで、実際に起きたことです。

  • サイトの不具合を、機械の検査より先に社内の利用者からの一報で気づいた(本来は公開前に見つけているべきものでした)
  • ページ数を数えるプログラムが、数え間違いを3回繰り返した(17本のはずが28本、46件のはずが36件など)
  • 画面を自動で確認する手順を、同じセッション内で4回、ゼロから書き直した
  • AIへの指示文が、説明を重ねるたびにどんどん長くなっていく——過去の失敗がどこにも書いていないので、毎回その場で説明し直すしかありませんでした

一つひとつは小さな出来事です。ただ並べると、共通点がありました。**AIが「賢くないから」ではなく、「知らせていない」から同じ失敗を繰り返している。**新入社員に取扱説明書もマニュアルも渡さず、「察してやってくれ」と言っているのと同じでした。

「賢さ」ではなく「渡す環境」で決まる

これは人を採用するときと、まったく同じ構図です。

よくある場面結果
新人に「よろしく」とだけ言って仕事を渡す同じ失敗を、人が変わるたびに繰り返す
引き継ぎ資料もマニュアルも無いまま担当を交代する前任者の失敗を、後任がもう一度踏む
チェックリストも手順書も無く「察して」で運用する出来の善し悪しが、その日の担当者次第になる

優秀な人を採用しても、引き継ぎ資料もなく「よろしく」とだけ言えば、同じ失敗を繰り返します。逆に、取扱説明書があり、確認すべき項目がチェックリスト化されていれば、誰がやっても一定の質になります。同じことがAIにも起きていた、というのが今回の気づきでした。

5つの地味な整備をした

やったのは、高性能な新ツールの導入ではなく、5つの地味な整備でした。

  1. 各サイトに「取扱説明書」を常備:注意点・作業手順・過去に踏んだ罠をまとめたファイルを置き、作業開始時に自動で読み込む形にした
  2. 踏んだ罠を、指示文でなくコードに固定:確認手順を4回作り直した原因を4つ洗い出し、二度と落ちない形で検査の仕組みそのものに書き込んだ
  3. 人手の確認を、機械の検査に変えた:書類上のチェックだけでなく、実際に画面を開いて確かめる検査にした。わざと設定を壊して試し、検査が本当に機能することも確かめた
  4. 記録のズレを、週次で自動検出:案件の記録と実際の状態を毎週機械が見比べ、ズレたときだけ通知する形にした
  5. 数え間違いの原因を根本から絶つ:「文章のパターンで数える」やり方をやめ、実際のプログラムを読み込んで正確に数える方式に作り直した。以後、同じ種類の数え間違いは起きていません

いずれも、新しいAIを賢くする話ではなく、同じAIに何を渡すかを変えた話です。

想定外の収穫と、ひとつの失敗

「取扱説明書」を作る作業自体をAIに任せたところ、私が口頭で伝えていた前提のうち2つが、実は事実と違っていたことをAI自身が調べて見つけ、訂正してきました。片方は「すでに解消済みの問題」を私がまだ残っていると思い込んでいたもの。もう片方は日付表示ルールの勘違いでした。

一方で、失敗もありました。複数のサイトへまとめて作業を反映するコマンドで、一つのサイトへの切り替えを書き忘れ、別のサイトへ二重に反映してしまったことがあります(実害はなく、2回目は何も変わらず終わりました)。原因は、複数の作業を単純につなげて書いていたことでした。一つずつ確実に処理する書き方に直し、以後は起きていません。便利な一括処理ほど、一つずつ確実に進む書き方をしないと事故のもとになります。

整備前と整備後

5つを整備した結果です。

観点整備前整備後
効果の持続そのセッション限り。次は忘れられるファイルや仕組みとして残り、ずっと効く
指示文の長さ説明するたびに長くなる知識は作業場所側にあるので短く済む
同じ失敗何度でも繰り返す二度目は機械が止める、または検出する

「指示する」から「職場を作る」へ

指示文は、そのセッションが終われば忘れられます。何度でも同じことを言い続けなければなりません。しかし、コード化した検査や、作業場所に置いた取扱説明書は忘れません。忘れないものに、知識を移していく——これが、人を増やせない中小企業がAIの実力を引き出す、現実的なやり方だと感じています。

新しいAIツールを一つも増やさずに、成果物の質を上げる。今回やったのはそれだけです。地味で、外からは何も変わって見えません。それでも、AIに何度も同じ失敗をさせていた側が、実は環境を整えていなかっただけだった、というのが正直な実感です。

明日、見直せること

もしAIの成果物に「なんとなく物足りない」と感じることがあれば、AIを変える前に、AIに何を渡しているかを一度見直してみることをお勧めします。取扱説明書はありますか。過去の失敗は、指示文でなく仕組みに残っていますか。それだけで、変わることがあります。

「AIに何を渡すか」の設計から、中小企業向けに伴走しています。AI導入サポートサービスは設計から構築・運用まで、お問い合わせフォームは個別のご相談にどうぞ。

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