AIエージェントを"並列"で走らせて、1日で40ページ超を作り変えた話 — 中小企業 × AI 経営(2026年6月)
自社のWebツール集に「動いて分かる図解」を40ページ超へ一気に展開。AIを"賢い1人の助手"ではなく"並列に増やせる労働力"として使い、設計と検証だけを人間が担った、社員数名の会社の実録。
はじめに:この記事の前提
Koinobori 代表取締役の杉﨑です。 社員数名の会社を経営しながら、自社の仕組みやWebサービスを自分の手で作り、AI を相棒に毎日少しずつ育てています。
今回お話しするのは、AI の使い方を「1人の優秀な助手」から「並列に増やせる労働力」へ切り替えたら、1日で40ページ超を作り変えられた という話です。技術自慢ではなく、「人を増やさずに、仕事の規模だけ増やす」という、中小企業にとって切実なテーマの実例として読んでいただければ嬉しいです。
1. 課題:数十ページに「同じ機能」を入れたい
私たちは totonoe という Web ツール集を自社で公開しています。あるとき、「難しい概念を動いて分かる図解アニメで説明したい」と思い立ちました。
ところが対象は 40ページ超。1ページずつ手作りすると、1ページ1時間でも丸1週間かかります。私は経営の合間に手を動かしているので、現実的ではありません。「やりたいけど、時間がない」——中小企業で新しい取り組みが止まる、いつものパターンです。
2. 取り組み:作り方そのものを変えた
2-1. まず「共通部品」にして、設定を書くだけにする
最初にやったのは、図解の仕組みを1つの共通部品にまとめることでした。各ページは「登場人物・持ち物・手順」を設定として書くだけで図解が動く——そういう形に整えたのです。
これが後の並列化の前提になりました。各ページの作業が「ゼロから作る」ではなく「設定を埋める」に変わったので、作業が独立し、同時に進められるようになったのです。
2-2. 複数の AI エージェントを「並行」で走らせる
ここが今回の肝です。各ページの設定は互いに独立しています。だったら、順番に1つずつではなく、同時に作れるはずです。
そこで私は、複数の AI エージェントを並行で起動し、それぞれに別々のページを担当させました。1体が終わるのを待って次へ、ではなく、8体が同時に別のページの設定を起案していく。波状に何度か繰り返し、40ページ超を一気に進めました。
2-3. 人間(私)は「統合」と「検証」に回る
並行で出てきた成果を、私がまとめてビルドし、実際に動かして確認し、全体に統合しました。AI が手を広げ、人間が束ねるという分担です。
2-4. これを可能にしたのは「最新世代の AI」だった
正直に言うと、この進め方は数年前なら成立しませんでした。今回使ったのは 2026 年 6 月時点で最新の Claude(Fable 5 と呼ばれる世代) で、経営者として私が素直に驚いたのは、次の 4 点です。
- 並行で動かしても破綻しない:8 体を同時に走らせても、互いの衝突を避けながら全体を一貫してまとめ上げる”指揮(オーケストレーション)“ができる
- 細かい品質ルールを守り抜く:「各手順はその瞬間の全体像を毎回きちんと書く」といった面倒な約束事を、40 ページ分ぶれずに守る
- 各ページの意図を自分で汲む:「このツールはこういう概念だから、こう図解すべき」を、一つひとつ自分で読み取って設計してくる
- 大量の文脈を保持する:40 ページ超の全体像と設計ルールを抱えたまま、最後まで筋を通す
人間の新人 8 人を同時に教育しながら、一定品質で 40 ページを 1 日で——と考えれば、まず不可能です。それをやり切れたのは、道具がここまで来たから。AI の世代が一段上がるたびに、中小企業が「人を増やさずにできること」の範囲は確実に広がっています。
3. 「手作業」と「並行エージェント」は別物だった
| 観点 | 手作業(1ページずつ) | 共通部品 × 並行エージェント |
|---|---|---|
| 所要時間 | 数日〜1週間 | 1日 |
| 品質のばらつき | 作る日・集中力で変わる | ルールを最初に指示して均一化 |
| 自分の役割 | 全部を自分でやる | 設計と検証に集中できる |
| スケール | 増やすほど時間が線形に増える | 並列数を増やせば頭打ちしにくい |
同じ「40ページ作る」でも、作り方を変えただけで桁が変わりました。
4. 失敗と学び:並列は「競合」する
きれいに進んだわけではありません。同時に走らせたら、複数のエージェントが同じ共通ファイルを一斉に書き換えようとして、ぶつかりかけました。全員が同じ机の上の1枚の紙を同時に書こうとするような状態です。
対策はシンプルでした。
- 共通の部分は私が一手に統合する(エージェントには触らせない)
- 各エージェントには「自分の担当ページだけ触る」と役割を限定する
- 「手順はその瞬間の全体像を毎回きちんと書く」など、品質ルールを最初の指示に明記して、出力のばらつきを抑える
並列化の本当の難所は、AI の賢さではなく「ぶつからないように仕事を割る設計」でした。これは人間のチームマネジメントと、まったく同じだと感じました。
5. 経営判断としての結論:AI は「増やせる労働力」
この経験で、AI の捉え方が変わりました。
AI エージェントは「1人の優秀な助手」ではなく、「指示すれば並列に増える労働力」である。
人を採用せずに、仕事の規模だけを一時的に何倍にもできる。これは、人材の採用・育成に時間とコストがかかる中小企業にとって、非常に大きな意味を持ちます。
ただし、忘れてはいけないことがあります。何を作るかの設計と、出てきたものの検証・統合は、最後まで人間の仕事として残りました。むしろ並列化が進むほど、ここに経営者の付加価値が集中していきます。AI に「数」を任せられるからこそ、人間は「何を・どう作るか」に集中できるのです。
まとめ:3 つのテイクアウェイ
- 独立した作業は並列化できる — AI は「賢い1人」ではなく「増やせる労働力」として使う
- 共通部品化(設定を書くだけ)が並列化の前提 — ばらばらのままでは並べられない
- 設計と検証・統合は人間に残る — むしろ価値が上がる。AI に数を任せ、人は判断に集中する
読者への問い: あなたの会社の「同じことの繰り返し作業」、まだ1人で順番にこなしていませんか? それは、並べれば一気に終わる仕事かもしれません。
この記事を読んだ方へ
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執筆:Koinobori 株式会社 代表取締役 杉﨑
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