この記事のポイント
- 5日間の点検で約50の弱点が見つかり、対策の点数は0点から83点になった
- 弱点に深刻さで点を付け、直した割合を点数にして社内に見せた
- まず合鍵・窓・外から見える書類の3つから点検する
Q. 小さな会社は、セキュリティ対策を何から始めればいい?
A. 合鍵・窓・外から見える書類の3つから始めてください。弊社では、業務の鍵が置きっぱなしになっていたこと、使っていない入口が開いていたこと、社内の書類がリンクを知っていれば誰でも開けたことが、弱点の大半でした。どれもお金をかけずに、その日のうちに直せました。
「うちは小さい会社だから、狙われることはないだろう」
私もそう思っていました。社員は5人です。盗まれて困るものなど大してない、と。
結論から言うと、弊社は「泥棒が入ろうと思えばすぐ入れる家」でした。AIと一緒に5日間かけて社内を点検し、見つかった弱点を順に直して、いまは「ふつうの泥棒ならあきらめる家」になっています。点数にすると、0点から83点です。
この記事は、その5日間の記録です。
点検してみたら、鍵をかけずに合鍵を玄関マットの下に置いていた
弊社は、研修の運営や営業の管理を、自分たちで作った仕組みで動かしています。作るのにAIを使うようになってから、仕組みの数は一気に増えました。増えた分、どこに何があるのかを、私自身が把握しきれなくなっていました。
そこで、AIに社内の仕組みと共有ファイルを一通り見てもらい、危ないところを挙げてもらいました。見つかった弱点は約50です。家にたとえると、こうなります。
| 家にたとえると | 実際にあったこと |
|---|---|
| 合鍵が玄関マットの下にある | 業務で使う鍵(パスワードのようなもの)が、プログラムの中や作業の記録に、そのまま書かれていた |
| 1本の鍵で全部の部屋が開く | 1本の鍵で、本来の用途よりずっと広い範囲に手が届く設定になっていた |
| 使っていない窓が開いている | 使っていない入口が、開いたままになっていた |
| 書類が道路から見える | 社内の書類の一部が、リンクを知っていれば誰でも開ける設定のままだった |
| 表札を誰でも使える | 会社の名前をかたったメールを、送れてしまう状態だった |
どれも、誰かが悪意を持って作ったものではありません。便利だから、急いでいたから、あとで直すつもりだったから。その「あとで」が積み重なっていました。
特に怖かったのは、書類です。以前、ファイルを別の場所から移したとき、「リンクを知っている人は見られる」という設定が、フォルダごとまとめて付いていました。誰も気づかないまま、そのままになっていたのです。
弱点に点数を付けて、直すたびに点数が上がるようにした
約50の弱点を、全部同じ重さで扱うと、どこから手を付けるべきか分からなくなります。そこで、深刻さで点数を付けました。目安にしたのは、脆弱性(ぜいじゃくせい)の深刻さを表す国際的な指標の区分です。
| 深刻さ | 点数 | どんなものか |
|---|---|---|
| 高 | 10点 | 漏れたら会社全体に効くもの |
| 中 | 5点 | 条件がそろうと実害が出るもの |
| 低 | 2点 | 日ごろの手入れ |
そのうえで、「全部の点数のうち、直した分が何割か」を100点満点で表すことにしました。弱点を1つ直すたびに、点数が上がります。
点数の動きは、こうなりました。
| 日 | 点数 | 評価 |
|---|---|---|
| 点検の前 | 0点 | E |
| 1日目 | 26点 | E |
| 3日目 | 40点 | D |
| 4日目 | 58点 | D |
| 5日目 | 83点 | B |
点数にしてよかったのは、「どこまで来たか」が、私にも社員にも一目で分かることです。セキュリティの話は、ふつうは「気をつけましょう」で終わってしまいます。点数があると、「今日は何点上がった」という会話になります。
なお、この点数は社内の目安です。外部の監査で付く点数ではありません。
直し方は、地味な作業ばかりだった
やったことは、どれも地味です。
- 鍵を全部取り替えた。 使える範囲を必要な分だけに絞り、期限も付けました。古い鍵は無効にしました。
- 使っていない入口を閉めた。 使っていないアプリや設定も片付けました。
- 書類のカーテンを閉めた。 「リンクを知っていれば誰でも見られる」設定を、1つずつ「社内の人だけ」に戻しました。お客様に見せる必要があるものは、相手を名指しで共有する形に変えました。
- 表札の偽造を防いだ。 会社の名前をかたったメールを、受け取る側がはじけるようにしました。
お金はほとんどかかっていません。かかったのは時間と、「これは本当に要るのか」を1つずつ判断する手間です。
失敗談:AIの点検も、間違える
1つ、失敗も書いておきます。
最初の日、AIは「この入口は閉まっている」と報告しました。ところが3日後に別の角度から確かめ直すと、実際には開いていました。「呼ばれたら開く」状態を、「閉まっている」と読み違えていたのです。
AIに点検させると、速く、広く見てくれます。それでも、報告をそのまま信じるのは危ない、と分かりました。いまは、直したあとに「本当に直ったか」を、別の方法でもう一度確かめるようにしています。共有ファイルも、閉じたあとに1つずつ設定を読み直して、「リンクで見られる」状態が消えたことを確かめました。
小さな会社こそ、まず3つから
「泥棒が入ろうと思えばすぐ入れる家」から「ふつうの泥棒ならあきらめる家」にするのに、特別な道具は要りませんでした。小さな会社がまず見るべきなのは、次の3つだと思います。
- 合鍵:パスワードや鍵が、メモやファイルにそのまま書かれていないか
- 窓:使っていない入口やアプリが、開いたままになっていないか
- 外から見える書類:共有の設定が「リンクを知っている全員」のままの書類がないか
完璧な家はありません。弊社にも、まだ手を付けていない対策が残っています。それでも、0点の家と83点の家では、泥棒の目に映る姿がまったく違います。
点検してみなければ、自分の家が0点だとは分かりませんでした。まずは1度、点検してみることをおすすめします。
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