この記事のポイント
- 社員5人の会社が2026年3月、社内のMac mini 1台でAIを動かした
- 会話や取引先名を外部へ送り続けることに違和感を覚え、自社で持つと決めた
- 外部のAIに投げている処理を、自社で完結できないか考えてみる
Q. 社内の会話や取引先の情報を、外部のAIに送り続けて大丈夫?
A. 送り続けることに不安があるなら、AIを自社のパソコンの中に持つ選択肢があります。弊社では2026年3月から社内のMac miniでAIを動かし、データを社外に出さずに済むようになりました。一方で、指示の調整や出力の崩れへの対処は自社で引き受けることになります。
毎月の請求が、気づけば静かに積み重なっている。契約したときは便利さの方が勝っていたのに、半年後に一覧を見ると「これ全部必要だったか」と思う。そんな経験はありませんか。多くの中小企業に、心当たりがあるのではないでしょうか。
私たちの小さな会社にも、同じことが起きていました。しかも今回積み重なっていたのは、契約金額だけではありませんでした。社内の会話や取引先の名前を、毎日のように外部のサーバーへ送り続けている、という事実でした。
外部に、任せすぎていたかもしれない
いわゆる生成AIには、早くから触れてきた方だと思います。2023年の本格営業を始めた頃から、ChatGPTが話題になり始めるとすぐに試し、その後はGeminiも併用するようになりました。文章の整形、議事録の要約、簡単なコードの補完、メールの下書き。便利でしたし、社員5人の会社にとってはレバレッジの大きい道具でした。最初の数か月は「これで十分」と思っていました。
ただ、使い込むうちに、心の片隅に違和感が残るようになりました。社内会議の議事録を整形させる、取引先への返信メールを下書きさせる——そういう場面で、ふと手が止まったことがありました。会議で出た発言、案件の文脈、取引先の名前。そういう情報を毎日のように外部のサーバーに送って整形させている。便利と引き換えに、毎月の利用料も静かに積み上がっていました。
一つひとつの作業は、たいしたことではありません。でも積み重なると、「うちの会社のことを、外の会社に少しずつ預けている」ような感覚になっていきました。誰かに強く止められたわけではありません。取引先から指摘を受けたわけでもありません。ただ、ふと立ち止まったときに、その感覚だけが残りました。
これは、前にも見た形だった
落ち着いて考えてみれば、これは月額課金の外部サービスと、まったく同じ構図でした。私たちの会社には、この構図に何度も向き合ってきた歴史があります。契約するたびに便利さに満足し、しばらく経ってから請求の一覧を眺め直して、ようやく違和感に気づく。そのくり返しでした。
| 以前は外部サービスに払っていたもの | 今はどうなっているか |
|---|---|
| 顧客管理の仕組み | 自社のパソコンの中に巻き取った |
| タスク管理の仕組み | 同じように、内製に置き換えた |
| 営業の案件管理 | ひとつずつ、社内の1台に集約した |
創業当初は、こうした仕組みを片っ端から外部サービスで契約していました。でも「月額の積み上げが、割に合わない」と感じるようになり、ひとつずつ社内のパソコンに巻き取ってきた経緯があります。生成AIだけは、なぜか「外部に頼るのが当たり前」だと思い込んでいました。同じ理屈が、実はここにも当てはまるはずなのに、です。
振り返ってみると、これは判断の順序の問題でした。「便利だから使う」までは正しい判断です。ただ、そのあとに「これは自社で持てないか」と一度は疑ってみる。その一手間を、生成AIに対してだけは、なぜかやっていなかったのです。
2026年3月、「うちでもやれる」と気づいた
転機は2026年3月でした。「OpenClaw」というオープンソースの仕組みが一気に注目を集め、「無料の道具を組み合わせてAIを自社の中に持つ」という選択肢が、急に現実味を帯びてきました。普段使っているパソコンの性能でも十分動くと分かるくらい、技術の進化も同じタイミングで追い風になっていました。
「これなら、うちもやれるんじゃないか」と素直に思いました。社内にはMac miniが1台あります。それで動くなら、自社で構築する価値は十分にあります。データを外に出さなくていい、月額の天井もない、試したいことを誰の許可も得ずに試せる——「やってみる」以外の選択肢は、ありませんでした。
社員5人の会社だからこそ、動きやすかった面もあります。稟議も、情報システム部門への相談も要りません。手元のパソコン1台と、代表である私の判断だけで、その日のうちに動き出せる。会社の規模が小さいことは、こういう場面では強みになります。
3月のうちに環境を組み始め、4月には実運用の一部を切り替え始めていました。最初に試して、いまも主役として動いているのは、重めの文章整形と要約を任せられる、比較的大きめの1台です。これをMac miniに載せて、社内の自動処理から呼べる形にしました。「外部のAIに投げていた処理」を、ひとつずつ自社の中に巻き取っていく作業が、ここから始まりました。今ではもう、日々のちょっとした自動処理のほとんどが、この1台を経由するようになっています。
始まったのは、「毎日の格闘」だった
正直に書きます。3月に導入してから、毎日が試行錯誤の連続です。指示の出し方を書いては書き直し、出力の形が崩れる事故と向き合い、日本語の固有名詞を読み違える癖を地道に潰し、細かい挙動の設定を少しずつ調整する——そんな日々がいまも続いています。「導入したら一気に楽になった」という綺麗な物語ではありません。
外部のAIサービスなら、こうした細部の面倒は向こう側が引き受けてくれていました。自社で持つということは、その面倒を自分たちで引き取るということでもあります。便利さを一部手放して、安心を買っている感覚に近いかもしれません。どちらが正解というより、どちらの面倒を、どちらの理由で引き受けるかという選択なのだと思います。
それでも、ひとつだけ変わらない実感があります。「動いているのが自社の中だ」という安心感は、どんな苦戦よりも価値があります。データを社外に送らずに済む、その一点だけで、毎日の格闘を続ける意味がありました。
このシリーズでは、社員5人の会社で代表である私が、下してきた判断と試行錯誤を、AIとどう付き合ってきたかを軸に1話ずつ書いていきます。まだ社員に広げる前の、代表である私自身がまず使い込んでいる段階の記録です。次回は、このAIがいま実際の現場で何をしているか、案件登録の話から取り上げます。
あなたの会社で、外部のAIサービスに投げている処理があれば、一度考えてみてください。もしそれを自社の中で完結できたら、何が変わりそうですか。積み重なっているのは、契約金額だけとは限りません。気づかないうちに、大事な情報も一緒に外へ流れ続けているかもしれません。一度、請求の一覧を眺め直してみることをお勧めします。
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